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第54回UTARCセミナー(UTARC-054)

日時 2023年10月30日 17:00 〜 18:30
主催UTARC
場所筑波大学3L307号室(ハイブリッド開催)

講演題目:
機械学習による統合失調症のモデルマウスのビッグデータ解析とトランスレーショナルなバイオマーカーの探索

講演者:山本純先生
テキサス大学サウスウェスタン医学センター[UTSW] 精神科・主任研究員/PI
慶應義塾大学理工学部でロボティクス・機械学習、また同大学院で計算神経科学および電気生理で学位を取得・卒業後、ルイ・パスツール大学医学部精神科、理化学研究所・脳科学総合研究センター、マサチューセッツ工科大学で日本人初のノーベル医学生理学賞受賞者の利根川進博士ラボの研究員を経て、2017年より米国南部のUTSWで独立。医学、生理学、計算機科学を融合したユニークな研究で記憶学習や 統合失調症、アルツハイマー病の基礎研究に従事。

講演概要:
UTSW・精神科・神経科学部門のYamamotoラボでは、さまざまな記憶の想起メカニズムをシステム神経科学の視点から海馬を中心に研究している。これまで我々は、自由行動下のマウスにおいて記憶の正確な想起がどのように行われるかを実験的に解明し海馬や海馬の入出力を担う嗅内皮質の同期的活動が正しい記憶の想起に重要であることを報告した。また、嗅内皮質から海馬CA1領域への直接投射する神経回路が、関連する記憶の連結に不可欠であることも示した。
これらは正常な脳内で見られる同期的活動であるが、我々はこうした同期的活動が年齢特異的に異常をきたすことで、統合失調症をはじめとする発症年齢特異的な様々な精神疾患の、特に幻聴・幻覚が誘発されるような場合に海馬の異常な同期的活動が寄与しているのではないかという仮説を立てた。我々のチームは同研究部門内の精神疾患を専門とするTammingaラボと協力し、統合失調症患者の脳解剖結果をもとに同様な変調をきたすモデルマウスを開発。このマウスを使用して海馬神経活動を高密度かつ長期間にわたり記録し、幼少期から成体期にかけて詳細に記録した。
現時点での解析から、マウスの海馬・歯状回での異常が青年期に起こると、それが青年期後半から成体期にかけて特に安静時または徐波睡眠中に異常な同期的活動がみられ、成人後も継続し続けることが明らかになった。一方で、成体期に成長して歯状回を操作しても、異常な同期的活動は現れない。また大規模データの解析においては、いくつかの機械学習アルゴリズムを試しており、特に線形重回帰モデルを拡張した一般化加法モデル(GAM: generalized additive model)が異常な同期的神経活動の検出に有用であることが分かりつつある。将来的には、これらの異常な同期的活動を新たなバイオマーカーとして、統合失調症患者の脳内で直接測定する計画でもある。本セミナーでは、精神疾患、脳科学、電気生理学、機械学習、AIの各領域にわたる議論を深め、多角的な知識を共有できればと考えている。

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